こんにちは、3Dアニメーターのアビハルです。
動物の描き方本を見かけたらとりあえず買う人です。
今回は自分が買ってよかった、動物の美術解剖学が学べる本を紹介します。
・外から見える筋肉だけざっくり知りたい人
・精密な解剖図より、動きのある絵を描きたい人 におすすめ。
幻獣デザインのための動物解剖学

イラスト画集みたいな本ですが、解剖学の本としても優秀。
文章は少なめ、簡単な動物の説明文と筋肉などの名称が載っています。
動物や幻獣(モンスター)の解剖図
動物の形態から幻獣(モンスター)をデザインするというコンセプト。
動物だけでなく、モンスターのデッサンと骨・筋肉の解剖図もあります。
キメラのような動物をつなぎ合わせたモンスターでも、骨格や筋肉の接合をしっかり考えた設計で描かれてます。
中身の8割くらいは実在する動物の解剖図。
恐竜とか古代生物も多く載ってるのでモンスターに応用しやすい動物が多く載ってます。
キャラデザインの資料にもいいですね。
動きのある絵が多い
普通の解剖図のような棒立ちの絵ではなく、アクションラインの効いた躍動感のある絵がたくさんある。
アニメーターやイラストレーターにとっては非常に参考になる絵。
ただし横からの絵が多く、他の角度から見た図は少ないので
精密な立体構造を把握したい場合は別の本もあったほうが安心。
とはいえ現実に存在しない生物に説得力を持たせる知識はとても役立つ。
生物の構造の理解に大いに役立つ一冊。
モンスターメインなら同じシリーズの本もおすすめ
動物より、モンスターの解剖図やデザイン画を見たいなら
同じシリーズの「幻獣と動物を描く」と「幻獣キャラクターを創る」もおすすめ。
これら2冊は骨格図・筋肉図はやや少なめですが
モンスターのスケッチがたくさん収録されてます。
【幻獣と動物を描く】
キメラっぽいデザインのモンスターが中心、カートゥーン系の絵も少しだけ載ってます。
腕が4本ある骨格や、背中に翼があるドラゴンなど実際の生物ではありえない骨格図は必見。
【幻獣キャラクターを創る】
キメラ系もいますが2足歩行の獣人タイプも多い。
ちゃんと骨格を考えてデザインされてるので、足や肩関節の描き方の参考にどうぞ。
スケッチで学ぶ動物+人比較解剖学

買う前にちょっとだけ注意点があるんですが、それを踏まえてもいい本ではあるので、迷ってる人向けに感想を書いておきます。
まずはこの本の良かったところから。
良かったところと特徴
動物の骨格や筋肉を、人間と比べながらわかりやすく図解してくれる本。
動物と人間って体の形は全然違うけど、骨の配置や基本構造はだいたい同じ。この本はその違いを直感的に理解しやすくしてくれます。
ただ解剖図を並べるだけじゃなくて、動物ごとの自然なポーズやシルエットの説明も細かく載っているのが特徴。
動物の背骨の自然なカーブ比較とか、普通の解剖学本ではあまり見ない点も触れてるのがよかった。
犬、猫、馬といったよく描く哺乳類が中心で、鳥や魚、爬虫類も少しだけ入ってます。
あと横からだけじゃなく、上からや正面からの絵も多い。
スケッチの参考としてとりあえず持っておくと便利な一冊。
注意点
もしかしたら私が持ってる初版本だけかもしれませんが…
誤字が多いです。(泣)
これがちょっとしたタイプミスくらいなら別にいいんですが、
動物の「かかと」の部分を「膝」と表記していたり、わりと致命的なものもあります。

一応、公式サイトで訂正部分のPDFが配布されているので、それを見て正しい名称を本に直接書き込んじゃうのがおすすめ。
『 スケッチで学ぶ 動物+人比較解剖学』お詫びと訂正 | 修正部分はこちら
ここさえ気をつければ、初心者にも参考にしてもらいたい本です。
文章より模写で覚える本
誤字はありますが文章はかなり少なめで、各イラストに3行くらいの説明が添えてある程度。
「なぜこの部分が人間と違うのか」みたいな詳しい解説はあまりなく、知識を深めるには少し物足りないかも。
でも、そのへんを書き始めると長文になるだろうから読むには気力が要るし、イラストよりデザインに近い分野になるので、イラスト初心者向けの本と考えれば今くらいの文章量でちょうどいい気もする。
人間と動物の骨格の違いをもっと深く知りたい人は、後で紹介する「くらべる骨格動物図鑑」のほうが合うかもしれません。
必要な要素だけを厳選してる
この本は、動物解剖学の中で、絵を描くのに最低限必要な要素を厳選している印象。
ほぼ外側から見える筋肉しか描いてませんが、絵を描く資料として使うなら問題ありません。
絵はシンプルな太い線。精密画というより図解寄りなイラスト。
細かい造形は省略されていますが、そのぶんパッと見て理解しやすい。
ざっくり骨格や筋肉を確認するには十分。
サッと見返したいときにも便利な一冊です。
メカニズムから理解する馬の動き

馬の動きと解剖学を学べる本。
骨格や筋肉がどう動いているのか、そしてそのとき馬に乗っている人の体がどう動くのかまで解説されてます。
特徴的なのは、馬の体にボディペイントで骨格や筋肉を描いた実写写真を使って説明しているところ。動きに合わせて骨格や筋肉がどう連動しているのか視覚的にわかりやすい。
文章量は多め
写真集みたいなもんですが、解説の文章もかなり入っていて、ページの半分くらいは文章。
読むにはちょっと根気がいりますが、そのぶん情報は濃いです。
動きにフォーカスした解説が多い。アニメーションを学んでいる人には刺さる内容。たとえば
・ジャンプのどのタイミングで重心が移動するのか
・そのとき騎手の重心はどう変化するのか
・衝撃を吸収するために体のどこが動くのか
など、具体的で参考になる話がたくさんある。
写真を眺めているだけでもポーズ資料&解剖学資料として役立ちますが
アニメーション力を上げたいなら文章も読むのがおすすめ。
読んだあと動画を見る目が変わる
この本を読んでからYouTubeとかで馬の動画を見たら、違う見え方ができるようになる。
読む前は「なんとなく重心が移動したタイミングでキーポーズを拾う」くらいだったのが、細かい骨格の挙動や騎手の重心の変化まで目が行くようになりました。
馬が歩いているだけの動画でも、首や尻尾の動きのちがいに気づける瞬間が増えます。
動きの視点から解剖学を深めたい人にはおすすめ。
ノウハウ本ではなく資料本として活用
もともとは乗馬をする人向けの本。
ケガ防止のために馬の動きを解説した感じ。
イラストやアニメーションに使える知識が詰まっていますが、描き方を教える本ではないのでご了承ください。
絵の描き方を学ぶなら「優しい馬の描き方」
本格的な馬の美術解剖学なら「エレンベルガーの動物解剖学」 を見た方がいいです。

エレンベルガーの本は医学書にも使えそうなほど詳細な解剖図。
3面図もあるからキャラクターデザインや3Dモデリングの資料にも使える。
ただ、棒立ちの絵がほとんどで動きが少ないので、アニメーション寄りの人には「メカニズムから理解する馬の動き」のほうが参考になりやすいかと思います。
くらべる骨格動物図鑑
私は電子書籍で買っちゃったんで写真がありませんが、
紙の本も販売されてるようです。
「動物の骨格を人で再現するとどうなるか?」という切り口で、骨格を楽しく学べる本。
骨格を人間に置き換えて説明
最大の特徴は絵面のインパクトがすごい。
動物の体形にムリヤリ人間を当てはめた、奇抜でシュールな絵の数々。
解剖学どうこう以前に、純粋に読み物として面白い。
たとえば「馬は指一本で立っている」とか、「膝に見える部分は実はかかと」とか、初心者にはピンとこないポイントも、人間の体に置き換えて説明してくれるので
どこの関節がどう動くのか感覚的に掴みやすいかと。
動物と人間は体形は違いますが骨の配置や基本構造はほぼ同じ。
この本はその共通点と違いを直感的に理解させてくれます。
おもしろ雑学本としても良書
絵の面白さだけじゃなく、ちゃんと学術的な解説もあります。
「動物の骨格がどこで人間と違うのか」「なぜその形をしているのか」などの説明がわかりやすい。
筋肉の解説はありませんが、初心者が最初のとっかかりに読むのによさそう。
絵の描き方本ではありませんが、作品のクオリティを上げるための知識を面白おかしく、でも真面目に解説しています。
「勉強するぞ!」と身構えなくても、おもしろネタ本感覚で気軽に読める。
ゆるーく学びたい人には最適。
ふつうの骨格図鑑なら紙の本が大きくて見やすいと思いますが
この本は雑学本みたいに読めるのでスマホの電子書籍でも十分でした。