動物の歩き方・走り方 / アニメーター向けに4本足の動かし方を解説 

今回は動物のアニメーションを作りたい人に向けて、
動物の自然な歩き方・走り方を説明します。

犬を例に足の動かし方を説明していきます。

アニメーションでよく使う歩き・走り

4足動物は移動速度によって足の動かし方が変わる。

移動速度一覧

このページのアニメーションは私が作ったものですがモデルはフリー素材をお借りしています。モデルをリギングする過程は別記事にあります。

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ゆっくり歩き / Walkウォーク

Walkゆっくり歩き

ポテポテとのんびり歩く。一般的に犬の歩きと言えばこの歩き方。

Walk足を動かす順番

右側を後足→前足の順番で動かしたら
左側も後足→前足の順番で動く。

足を1本ずつ前に出すので、前足と後足が入れ替わるように近寄る瞬間があるのが特徴。
3本の足で体重を支えるタイミングがあるから重心が安定している。

急停止しても3本足で立ったポーズのまま立ち止まれるので 
忍び足など超ゆっくり歩くときもこの歩き方。

別記事でリファレンスになる実写動画も紹介しているのでそちらもどうぞ。

関連記事 ゆっくり歩き(Walk)のリファレンス動画

早歩き / Ambleアンブル

Amble/早歩き

スタスタと少し早く歩く。
ゆっくり歩きから早歩きに移り変わるときにも見られる。

Amble/足を動かす順番

足を動かす順番はゆっくり歩きと同じだけど、動かすタイミングが若干異なる。

タイミングは足が地面に着地する瞬間に注目するとわかりやすい。
後足が前足よりわずかに早く着地するが、ぱっと見はほぼ同着に見える。

人間で言えば右手と右足が同時に出る、緊張した人の歩き方に似ている。

関連記事 早歩き(アンブル)のリファレンス動画

斜対歩の早足 / Trotトロット

Trot/斜対歩

トットット…と弾むようなテンポ。犬の散歩でよく見られる歩き方。
人間で言えば軽いジョギングくらいのイメージ。

Trot/足を動かす順番

対角線上の足2本を同時に動かす。

このような足の動かし方を「斜対歩」という。

常に2本の足が地面に着地している。
胴体は上下に弾む。人間の歩きと同様、地面を蹴ったときに体が持ち上がって、足を踏み込んだ時に体が沈む。

斜対歩と側対歩

斜対歩:対角線の足2本を同時に動かすパターン
側対歩:同じ側の足2本を同時に動かすパターン

斜対歩と側対歩

犬、猫、馬などは斜対歩が多い。
ラクダ、キリン、象などは側対歩が多い。

側対歩の早足 / Paceペース

Pace/側対歩

トットット…と軽やかなテンポ。

Pace/足を動かす順番

同じ側の足2本を同時に動かす。
このような足の動かし方を「側対歩」という。

常に2本の足が地面に着地する。トロットと同じくらいの速さ感だけど、体の上下の揺れが小さく、左右の揺れが大きい。

オールド・イングリッシュ・シープドッグなど一部の犬種を除き、犬ではあまり見かけない歩き方。

関連記事 側対歩の速足(ペース)のリファレンス動画

小走り / Canterキャンター

走りは歩きと違って、体が空中に浮く瞬間がある。

Canter/小走り

タタタッ、タタタッと軽快に走る。馬で言えば「パカラッ パカラッ」の走り方に相当する。
1サイクルを3歩で走るテンポが特徴。

Canter/足を動かす順番

対角線上の足2本が同時に着地するから足音が3歩に聞こえる。

胴体はシーソーのように上下に傾く動きをする。
足だけでなく胴体もしっかりアニメーションするとリアルな動きになる。

関連記事 小走り(キャンター)のリファレンス動画

走り / Gallopギャロップ

Gallop/走り

一般的に「走る犬」といえばこの動き。ドッグランで遊び回る犬の動画なんかでよく見かける。

◯を書くローテーションのように足を動かす順番が回ってくる。

Gallop/足を動かす順番

※たまに〇ではなく8の字に足の順番がローテーションする場合もあるけれど、ほとんどの犬が〇形。

4本の足が集まったあたりで一瞬体が空中に浮く。

頭や胴体が波打つように大きく揺れる。体幹をウェーブアニメーションさせるつもりで動かすと躍動感が出る良いアニメーションになる。

関連記事 走り(ギャロップ)のリファレンス動画

全力ダッシュ / Double Suspension Gallopダブルサスペンション・ギャロップ

W.S.Gallop/全力ダッシュ

ドッグレースなど全力疾走するときに見られる走り。
足を動かす順番はギャロップと同じだけれど、全身が宙に浮くタイミングが2回ある。

W.S.Gallop/足を動かす順番

全部の足が集まった時・伸ばしきった時に全身が浮く。

全身を大きく伸び縮みさせる走り方。アニメーションにする際は背中を使って走る意識を持つと迫力ある動きになる。

ダブルサスペンション・ギャロップで走る犬種

ウィペットやグレーハウンドなど、サイトハウンド系の犬種がこの走り方をすることで有名。

調べた所、全ての犬がWサスペンションギャロップで走るわけではなく、多くは全力でも普通のギャロップで走るらしい。

一方、アニメーション作品ではグレーハウンド以外でこの走り方をする犬も見かけますが、個人的には誤りではないと思ってます。
むしろダイナミックでアニメーション映えする動きなので積極的に活用していいんじゃないかと。

というのもグレーハウンド以外の犬種が、2回空中に浮く走り方をしている動画はわりと見かけます。
実際の動画を関連記事にまとめておいたので参考資料にどうぞ。

関連記事 全力ダッシュ(Wサスペンス・ギャロップ)のリファレンス動画

注意点

足の動かしかたは遅い順に

ウォーク > アンブル > トロット ペース > キャンター > ギャロップ > Wサスペンスギャロップ
加速や減速すると足の動かし方も変わるんですが、
 必ずこの順番通りに動きが移り変わる訳じゃない点に注意

例えば急加速した場合 ウォーク→トロット や ウォーク→ギャロップ など。
速さに合った動きの感覚を掴むのがコツ。

歩様が移り変わるリファレンス動画は別記事にまとめました。

関連記事 歩様が切り替わる瞬間のリファレンス動画

 全ての動きがこの7種類に分類できるとは限らない

動画サイトでリファレンスを探すと、ウォークかアンブルか微妙な動きだったり
キャンターとギャロップの中間ぽい感じだったり…そんな動画も見かける。
ロボットのように決まった動きをする訳じゃないので境目は曖昧。

歩様の名前を覚えるより、資料を見て特徴をとらえる方が重要。

犬の歩きの特徴

  • 歩く速度が速いほど足が宙に浮く
  • 同じ側の後ろ足→前足の順に動かす
  • 対角線上の足を同時に動かす「斜対歩」 同じ側の足を同時に動かす「側対歩」がある

犬の走りの特徴

  • 全身が宙に浮く瞬間がある
  • 背中を伸び縮みさせる
  • ギャロップは足を動かす順番がローテーションするように回る

参考資料

参考資料はYoutubeとかでペット動画を見るのも良いですが、動画だと

 ・キーポーズを拾うのが面倒
 ・初心者はどこがキーポーズかわからない
 ・そもそも動画探すのがダルい

という欠点もあるので、アニメーション用の資料集を見た方が早いときもあります。
アビハルはこの資料をよく使ってます。

Animals In Motion
動物の歩き・走りを連続写真に収めた写真集。
トロットやギャロップなど、歩きの種類ごとに撮影されてます。キーポーズを撮ってるのでアニメーションの資料として使いやすいです。

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手塚プロが教える 動物アニメーションの描きかた
シンプルな線画で描かれているのでわかりやすいです。
動物の種類も多いので重宝してます。
実写ではなく絵で資料が見たいとき便利。

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これらの本は別記事でアビハルがレビューしています。
興味あればそちらもご覧ください

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