動物のジャンプアニメーションの作り方

こんにちは アニメーターのアビハルです。
blenderで動物のジャンプモーションを作ったのでコツとか制作過程を書いていきます。

ジャンプモーション完成
ポーズtoポーズでアニメーションしたよ

ジャンプアニメーションに必要なポーズ

必須のキーポーズはこの7つ。

ジャンプのキーポーズ
  1. 待機
  2. しゃがんで力を溜める
  3. 全身が伸びて離陸
  4. 一番高いところで体が縮こまる
  5. 前足から着地する
  6. しゃがんで着地
  7. 待機に戻る

人間と骨格は違いますが、人間のジャンプアニメーションと考え方は同じ。
ボールが跳ねるアニメーションでよく使う「スクアッシュ&ストレッチ」のルールに動物のポーズを当てはめてます。

バウンドボール
よくあるコレと同じ

①待機

ポーズ①待機

ただの棒立ちではなく、顔がジャンプする方向を向く。(超重要)
今回は障害物を飛び越える動きで作ったので視線も上を向いてますが正面や下方向にジャンプするときは視線も前や下を向きます。

行き先に顔向ける

先に視線を動かすことで「あそこに行こう!」という意思を感じる生きた動きになります。

②しゃがんで力を溜める

ポーズ②しゃがんで力を溜める

顔は飛び出す方向を見続ける。
姿勢を低くして背中を丸める。文字通り猫背。前後の足が近寄ると自然なしゃがみ方になります。

③全身が伸びて離陸

ポーズ③全身が伸びて離陸

前足が先に地面から離れる。
後足と背中を目一杯のばして飛び上がる。背中が反るくらい胴体を伸ばす。

④一番高いところで体が縮こまる

ポーズ④一番高いところで体が縮こまる

伸びきった体が少し緩む。背中は少し丸める。
正面から見ると前足は胸の前で軽くクロスする。後足はつま先をそろえる。

⑤体を伸ばしてつま先から着地する

ポーズ⑤体を伸ばしてつま先から着地する

前足から着地する。あごは引いて視線は着地点を見る。背中が反るくらい背骨を伸ばす。

⑥しゃがんで衝撃を吸収して着地

ポーズ⑥しゃがんで衝撃を吸収して着地

着地の衝撃で再びしゃがんだ姿勢に。顔はもう前を向いてok。
前足に体重が乗ると肩甲骨が持ち上がってサスペンションのように衝撃を吸収する。

⑦元のポーズに戻る

ポーズ⑦元のポーズに戻る

前方に跳んだ場合は、少し前進しながら元のポーズに戻ると重さを感じる動きになる。

実際にポーズtoポーズでアニメーションする過程

ここからは実際にアニメーションを作っていく過程を書いてきます。
Blender4.0を使ってますがmayaとか他のCGソフトでも同様にできます。

ブロッキング

前述した7つのキーポーズをつけていきます。
ポーズ同士の間隔はまだ適当。とりあえず等間隔でOK。

7つのキーポーズ並べる

この段階から体幹の軌跡がキレイな弧を描いて繋がるようにすると滑らかな動きになります。
逆に言えばこの時点でガタガタしてたらキレイなアニメーションになりません。

ちなみにポーズをわかりやすくするためポーズの補間は「一定」にしてます。

補間を一定に
補間とはグラフエディタを右クリックして出てくるコレ

左右非対称のポーズの方が躍動感が出る

左右対称のポーズでもジャンプモーションは成立しますが、いかにもCGで作りましたな印象になりがち。
あえて左右対称じゃないポーズにした方が生き物感がでます。

左右非対称のポーズ

慣れてる人は最初から非対称の絵でブロッキングして問題ないですが
初心者さんはいきなり非対称の絵で作り始めると、後で足踏みを追加する時どの足を動かすか混乱する可能性があります(アビハルが初心者のときはそうでした)

最初は左右対称ポーズ進めて、後で足踏みに合わせて手足の位置を非対称にズラしていく方法がおすすめ。

キーポーズの間隔を調整

それぞれのポーズの間隔を調整します。
ポーズの間隔もバウンドするボールと同じ考え方で決めてます。

離陸と着地の瞬間は速くて、空中の一番高い所の滞空時間は長くします。

キーポーズの間隔調整
この段階で完成に近いテンポにしたいので、補間を「ベジェ」に戻してタイミング調整してます。

これだけでもジャンプしてるって分かる動きに見えますね。
でも、ふわ~っとしたヌルいジャンプだし、足も伸びきったり滑ったり…
それらを補うようにポーズを足していきます。

キーポーズの間のポーズを足す

足が滑ってる所にポーズを足して足踏みを入れます。歩行モーションを作る時と同じイメージ。空中でも動きがヌルくなる所はキーを足しメリハリをつけいきてます。

足りないポーズ足す

今回はA~Gの7つのポーズを追加。

追加ポーズ一覧

今回は最初のキーポーズを左右対称でつけたので、足運びをつけながら①~⑦も非対称のポーズに修正してます。
あとA~Gのポーズを足しながら①~⑦の間隔も少しだけ変えてます。後からキーのタイミング調整がしやすいのがポーズtoポーズの利点。バウンドボールの法則は守りつつ、イイ感じのテンポになるよう微調整していきます。

各パーツの動きを微調整

ブロッキングができたらアニメーションの大筋は完成。後は細部を整えていくだけです。
動きが固い所を直していきます。

グラフエディタを滑らかにする

ポーズ弄ってるうちにグラフエディターが汚くなるので整えます。カクカクしてる部分が滑らかな曲線になるように調整。

グラフエディタ調整

滑らかな曲線になるならキーのタイミングや数値を多少変える時もあります(もちろんアニメーション再生して確認しながら)
むしろ全身のパーツが同じタイミングで動いてるとブロッキングしました感が残るので多少バラけた方がいいくらいです。

弧を描く軌道で体をうごかす

体の軌跡が円や弧を描くとキレイなアニメーションになる。「モーションパス」という軌跡を表示して確認できます。

モーションパス表示

軌跡を表示したいコントローラーを選んで、
プロパティエディタ > データ > モーションパス > 計算 で表示。

とくに頭とか指先とか、出っ張ってるパーツを重点的に調整します。

とくにIKは弧の軌道が作りにくいので、手足をIKでつける場合はモーションパスをガイドラインにした方が滑らかな動きにできます。

FKの方がキレイな軌跡が作りやすいので空中の手足はFKで動かす人もいますね。
でもアビハルは短時間の空中なら全部IKでゴリ押しますだってIKFKが混在してるとキーがゴチャゴチャしてダルいんだもん

揺れモノの動きを入れる

人間で言ったら服や髪の毛の揺れをつける工程。猫ならヒゲや毛、耳、尻尾にあたる。
耳と尻尾は猫の意思で動かしてる部分をつけてから揺れや振動を足す。

ちなみにBlenderのRigifyの尻尾はデフォルト設定だとなかなか揺らしにくい…。簡単に揺らせるようにする修正方法を別記事に書いたので興味ある人はそちらもどうぞ。

関連記事 Rigifyの尻尾が勝手に回転する…普通のFKと同様に動かしてキレイに揺らす方法

力は順番に伝わる

着地の衝撃で体は沈むんですが全身が同時に沈むと固い動きになっちゃいます。
前足→肩→胸→腰→尻尾
の順番で体が沈むと生き物っぽさが出る。
最後に元の姿勢に戻るときも上半身→下半身の順に体を起こすと自然。

いろいろ書きましたがよく聞くディズニーのアニメーションの法則と同じですね。
こんな感じで細部を整えたら完成!

完成!

猫ジャンプ完成

これで完成!お疲れさまでした。

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